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世界は感情で動く - 行動経済学からみる脳のトラップ

行動経済学の本であるが、紙面の多くは心理学・脳科学で占められています。
脳はなにかと言い訳する」で書かれていたのと同じように、人間は、脳の思考や記憶をつかさどる領域だけでなく、視覚・聴覚などといった感覚器官をつかさどる領域まで、「感情」によって脳の活動の仕方が変化するのが興味深いです。
もう、そこまでいくと人間は「感情」から抗えないのではないかと思わされるぐらい。

つまり、本書は、人間(自分と他人)の思考や行動、関り方の根本的原因を解明した本だといっても過言ではないと思います。

ホント、自分は理論的な人間だと思っていましたが、この本を読んでみたら全然でした。ものの見事に「感情のトラップ」にはまっています。
本書の最初から最後まで、「ああ、そうだったのか」「まったくその通り」とうならされまくりで、全部を紹介したいところですが、特に興味深かった点をピックアップすると、

パート1 まずは心の準備体操

  • 3.一ドル買うのにいくら払うか?―コンコルドの誤謬
ある飛行機会社の社長が、従来にない全くの新技術の飛行機をつくろうと、1000万ユーロを注ぎ込んだ。ところがそのプロジェクトがすでに目標を90%達成したとき、スピードも経済性もさらに高い同種の飛行機を、他社がすでに市場に出したというニュースが飛び込んできた。
あなたがこの飛行機会社の社長だとして、プロジェクトを完遂するために残り10%を投資するか否か?

この質問に、85%の人がイエスと答えています。
では、以下のように質問の形を変えてみたらどうでしょう?

すでに使ってしまったお金は置いておいて、ライバル会社の飛行機には明らかに劣る飛行機を仕上げるために、あと100万ユーロの追加投資をしますか?

この質問形式では、17%の人しか投資していいと答えなかった。

つまり、「今までに使ったお金が無駄になる」という損失を回避しようとするトラップに見事にはまっているのですね。

これは何もお金に限ったことでなくて、(この本の後にも出てきますが)自分の今までの主張を取り下げるのは非常に難しい。客観的に考えると対案の方がいいのに、自分の主張に賛成する意見を過大評価し、対案に賛成する意見を過小評価する(あるいは「聞かなかったことにする」)、「感情」の働きにもでてきます。

パート3 集団のなかでの困った判断

  • 17.他人には辛く、自分には甘い―帰属のエラー
帰属のエラー

まわりに起きる社会的事象や、自分や他人の行動の原因を推理・推論することを「帰属」あるいは「原因の帰属」という。それを理論化したものが「帰属理論」である。複数の理論から成るが、下記のような、さまざまなエラー、ゆがみが見つかり、それを「帰属のエラー」という。

  1. 知覚的に目立った情報・刺激に左右されること。
  2. 他者の行動に対しては性格・個性などの内面的要因を重視する。
  3. 自分の行動に対しては極めてポピュラーで普通の反応であり、普通とは違ったとすれば状況、すなわち外的要因が異なったと思い込むこと。
  4. 自分が成功すると、自分の内面に理由があり、失敗すると外部に要因を求めること。

こうしたバランスの取れない判断は、とても奇妙な結果を生むこともある。
「期限を守る」ということにかけては、自分の能力に信頼を置いているし、「期限を守る」他人の能力は高く評価する。
でも、自分が期限が守れなかった場合は、「めったにないほど大変な事情があったからだ」と言い訳をしたりする。しかしながらその事情とやらは、距離を置いて眺めたり、他の人に当てはめたりしてみれば、少しも例外的なものではなく、どこにでもあることだとわかる。
かくして、「期限を常習的に守らない人の言うことは信用するなかれ」という帰属のエラーにひっかかる。

私も最近、知り合いと口論したことがあったのですが、相手が見事に「帰属のエラー」に陥っていました。これを自覚させることはとても難しいことだと改めて認識しました。

  • 21.そう考えない人はどうかしている―フォールス・コンセンサス効果
フォールス・コンセンサス効果

自分と他者の間に共有されている「合意性(コンセンサス)」を過度に見積もる認知的バイアスをいう。
つまり、人はある状況における自分の判断や行動は一般的なものであり、適切であるとみているので、他者も普通なら自分と同じように判断し、行動すると考えるのである。
そして、もしそれを逸脱した他者に出会うと、その他者が特別なのか、あるいは変わった存在だとみなしてしまう。

このトラップも侮れない。普通に暮らしていると、自分の考えが周囲の皆の考えと同じものであることは、ごく当たり前のことであると思い、そのことに疑いを持つようなことはしない。
しかし一たびその前提が崩れ、「自分と違う」人が現れると、その人に何か欠陥があるのではというレッテルをはり、自らの「常識」に固執するようになる。

自分の普段の行動や思考に従うのって、楽ですからね。それに、「それが最善の行動・思考」だと考えるからその行動・思考をするものだし。
自分とは違う思考パターンの人を受け入れるのって、難しいことだけど、やっていかなければいけないことなんですよね。

パート4 いざ、決断のとき

  • 35.都合のいいことだけを覚えている―明るい記憶
面倒なことに、私たちの記憶は、過去の選択によってある程度が決まる。ある選択をした後で、頭の中を整理するのだ。もとの問題を単純化して、すでにした選択を危うくする情報はノイズのようにして脇にどけ、後押ししてくれるものだけを思い出す。
私たちがもっと理性的で、確固とした記憶力と曇りない目によって、すでにした選択の長所と短所を吟味することが可能だと、行動にはなかなか移れなくなり、そのためにおそらく不満も増してしまう。
頭の中にジレンマがありありと残るだけでなく、認知の作業にも手間がかかり、選択後の行動にもブレーキがかかって、誤った判断一つ一つを、苦々しくも正直に考えなければならなくなる。

そう。だから人間の脳みそは「記憶を忘れるようにできている」のですよ。過去の辛い記憶をいつも思い出せるようでは、精神的に参ってしまう。


引用が長くなりましたが、本書「世界は感情で動く (行動経済学からみる脳のトラップ)」は、このような内容にあふれた本です。
「行動経済学を学ぶ」というより、むしろ、自分を向上させたい・他人とよりよい関係を持ちたい人が読むべき本だと思います。
この本、読まないとホント、後悔しますよ。だって、最終章が

39.「あの飛行機に乗ってさえいたら」―後悔の理論

ですから。(笑)

ところで、書評ブロガーでもある弾さんのこの本の書評
書評 - 世界は感情で動く - 404 Blog Not Found
の内容がややおざなり。
彼にとって本書は易しすぎたのかな?

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コメント

この手の本は一度読んだことがあるんですが、あまりに難しすぎる説明に挫折した記憶がありますw
自分が読んだのはシカゴ大でPh.Dを取った印南一路という人の「すぐれた意思決定」でした。

[ すぐれた意思決定―判断と選択の心理学 (中公文庫): 印南 一路 ]
http://www.amazon.co.jp/dp/4122039614


この本は多分いま読んでもよくわかりませんが、この記事で紹介されている本はわかりやすそうでいいですね~。
デール・カーネギーの「道は開ける」を少しだけ思い出しました。

投稿: yosu | 2009.02.22 13:17

おー、yosu さん、難しい本を読んでますね。

この「世界は感情で動く」は行動経済学や社会学の知識がまったくなくても読めて、ためになる本ですので、機会があればぜひ読んでみてください。

投稿: マーマー・ヨ | 2009.02.24 18:47

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